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薬局の保険調剤(監査、指導)のコラムです。保険薬局・保険薬剤師への個別指導、監査への帯同は、指導監査に強い弁護士にご相談下さい。

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薬局・薬剤師の保険調剤(8):保険調剤の指導、監査

薬局の個別指導、監査に強い弁護士の鈴木陽介です。


ここでは、薬局の保険調剤(指導、監査、不正請求、指導監査の実施状況)についてご説明します。内容は、厚生労働省保健局医療課医療指導監査室の公表資料「保険調剤の理解のために(平成28年度)」に基づいており、弁護士鈴木が適宜加筆修正等しています。

薬局・薬剤師の個別指導と監査については、以下のコラムもご覧いただければ幸いです。

【コラム】薬局の個別指導と監査の上手な対応法

X 健康保険法等に基づく指導・監査


 1 根拠法令等

(1)根拠法令
健康保険法、船員保険法、国民健康保険法、高齢者の医療の確保に関する法律

(2)実施に関する基本的事項の規定(保険局長通知)
指導大綱、監査要綱

 2 指導

(1)目的、指導方針(指導大綱)
ア 保険調剤の質的向上及び適正化を図る。
イ 保険調剤の取扱い、調剤報酬の請求等に関する事項について周知徹底させることを主眼とし、懇切丁寧に行う。

(2)指導の対象
社会保険の医療担当者である保険薬局及び保険薬剤師
 健康保険法の場合の規定
 (厚生労働大臣の指導)
 第73条 保険医療機関及び保険薬局は療養の給付に関し、保険医及び保険薬剤師は健康保険の診療又は調剤に関し、厚生労働大臣の指導を受けなければならない。
 2 (略)

(3)指導形態
ア 集団指導、集団的個別指導、個別指導がある。
イ 個別指導には、
(ア)地方厚生(支)局及び都道府県が実施
 都道府県個別指導
(イ)厚生労働省並びに地方厚生(支)局及び都道府県が実施
 共同指導
 特定共同指導・・・同一開設者に係る複数の都道府県に所在する保険薬局が対象

(4)個別指導後の措置
「概ね妥当」、「経過観察」、「再指導」、「要監査」がある。

 3 監査

(1)監査方針(監査要綱)
 調剤内容又は調剤報酬の請求について、不正又は著しい不当が疑われる場合等において、的確に事実を把握し、公正かつ適切な措置を採ることを主眼とする。個別指導の後に、監査がなされることが通例である。
 健康保険法の場合の規定
 (保険医療機関又は保険薬局の報告等)
 第78条 厚生労働大臣は、療養の給付に関して必要があると認めるときは、保険医療機関若しくは保険薬局若しくは保険医療機関若しくは保険薬局の開設者若しくは管理者、保険医、保険薬剤師その他の従業者であった者(以下この項において「開設者であった者等」という。)に対し報告若しくは診療録その他の帳簿書類の提出若しくは提示を命じ、保険医療機関若しくは保険薬局の開設者若しくは管理者、保険医、保険薬剤師その他の従業者(開設者であった者等を含む。)に対し出頭を求め、又は当該職員に関係者に対して質問させ、若しくは保険医療機関若しくは保険薬局について設備若しくは診療録、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
 2 (略)

(2)監査後の行政上の措置
 保険薬局・保険薬剤師の「取消」、「戒告」、「注意」がある。
 仮に監査の場で、不正・不当な請求を行っていたことが明らかになれば、保険薬局の指定や保険薬剤師の登録の取消等の厳しい行政処分が下されることとなる。
 また、不正・不当な請求により支払われた調剤報酬については、保険者に対する返還金も発生することとなる。
 取消処分となった場合は原則5年間は再指定・再登録は行わないこととなっている。

(3)不正請求の代表例
 不正請求には、次のようなものがある。
  @無資格者調剤:非薬剤師による調剤
  A架空請求:調剤の事実がないものを調剤したとして請求
  B付増請求:実際に行った調剤内容に実際に行っていない調剤内容を付増して請求
  C振替請求:実際に行った調剤内容を点数の高い別の調剤内容に振替えて請求
  D二重請求:同一の調剤に対する請求を複数回にわたり請求
 こうした法令に対する不正な行為は、医療保険の世界に限らず社会のどの分野においてもあってはならないことであるが、特に現物給付出来高払いを基本とする医療保険制度を維持するためには致命的なものである。故意に不正請求をするのは論外であり、通常の調剤報酬請求を行っているのであれば起こり得ないものである。

(4)保険薬局の指定取消
 調剤の多くが保険調剤として行われている現在において、保険薬局の指定や保険薬剤師の登録を取り消されることとなれば、保険薬局の経営は成り立たなくなり、保険薬剤師が保険調剤を行うことが実質的に不可能となる。これは、保険薬局、保険薬剤師のみの問題でなく、医療を受ける側である住民に対し多大な悪影響を与えてしまうものである。

ポイント
・ 保険薬局の指定、保険薬剤師の登録がなされたということは、自らの意志で保険者との間で交わした公法上の契約に基づく調剤(保険調剤)を行うということ
・ 契約に違反した場合には、契約の解除(保険薬局の指定取消、保険薬剤師の登録取消)につながることがある

 4 平成26年度の指導・監査等の実施状況

(1)指導・監査等による返還金額(医科、歯科、調剤を含む。)
 保険医療機関等から返還を求めた額は、約133億2千万円
 (内訳) 指導による返還分:約41億3千万円
   適時調査※による返還分:約65億2千万円
      監査による返還分:約26億7千万円
※ 適時調査
 施設基準を届け出ている保険医療機関等について、地方厚生(支)局が当該保険医療機関等に直接赴いて、届け出られている施設基準の充足状況を確認するために行う調査。

(2)取消の状況
ア 保険医療機関等の指定取消:17件(うち、薬局1件)
        指定取消相当:24件(うち、薬局6件)
イ 保険医等の登録取消:29名(うち、薬剤師8名)
     指定取消相当: 1件(うち、薬剤師0名)
※ 「取消相当」とは、本来、取消処分(保険医療機関等の指定取消、保険医等の登録取消)を行うべき事案について、保険医療機関等が既に廃止され、又は保険医等が既にその登録を抹消している等のため、これら行政処分を行えない場合に行われる取扱いであり、取消処分の場合と同様、取消相当である旨が公表されるほか、原則として5年間、再指定(再登録)を受けることができないこととなる。


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薬局・薬剤師の指導、監査のコラム


薬局・薬剤師の指導、監査のコラムの一覧です。
個別指導(薬局)の際に、また日常の薬局運営にご活用下さい。

 薬局の指導監査

1 薬局の個別指導と監査

 保険薬局・保険薬剤師の取消の実例

1  保険薬局・薬剤師の取消の実例(1):情報提供の個別指導

2  保険薬局・薬剤師の取消の実例(2):無資格調剤による取消

3  保険薬局・薬剤師の取消の実例(3):監査拒否による取消処分

4  保険薬局・薬剤師の取消の実例(4):虚偽の処方せんの不正請求

5  保険薬局・薬剤師の取消の実例(5):別薬局の調剤分の不正請求

 薬局・薬剤師の保険調剤の概説

1  薬局・薬剤師の保険調剤(1):保険薬局と医療保険制度

2  薬局・薬剤師の保険調剤(2):保険調剤のルールと調剤報酬

3  薬局・薬剤師の保険調剤(3):保険調剤と処方せん、調剤録

4  薬局・薬剤師の保険調剤(4):調剤点数表、調剤技術料

5  薬局・薬剤師の保険調剤(5):薬学管理料、服用歴管理指導料

6  薬局・薬剤師の保険調剤(6):薬剤師指導料、包括管理料

7  薬局・薬剤師の保険調剤(7):明細書、届出事項、標示・掲示

8  薬局・薬剤師の保険調剤(8):保険調剤の指導、監査

9  薬局・薬剤師の保険調剤(9):保険調剤と薬担規則

10 薬局・薬剤師の保険調剤(10):保険調剤の調剤基本料

11 薬局・薬剤師の保険調剤(11):保険調剤の調剤料

12 薬局・薬剤師の保険調剤(12):薬剤服用歴管理指導料

13 薬局・薬剤師の保険調剤(13):かかりつけ薬剤師指導料

14 薬局・薬剤師の保険調剤(14):かかりつけ薬剤師包括管理料

15 薬局・薬剤師の保険調剤(15):保険調剤の外来服薬支援料

16 薬局・薬剤師の保険調剤(16):在宅患者訪問薬剤管理指導料

17 薬局・薬剤師の保険調剤(17):在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料

18 薬局・薬剤師の保険調剤(18):在宅患者緊急時等共同指導料

19 薬局・薬剤師の保険調剤(19):退院時共同指導料、情報提供料

20 薬局・薬剤師の保険調剤(20):薬剤料、特定保険医療材料料

21 薬局・薬剤師の保険調剤(21):評価療養 患者申出療養 選定療養

22 薬局・薬剤師の保険調剤(22):薬担規則の掲示事項

23 薬局・薬剤師の保険調剤(23):書面保存での情報通信技術利用

24 薬局・薬剤師の保険調剤(24):医療システムガイドライン

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